ずっと前に購入して積読にしていた「営繕かるかや怪異譚」その壱、その弐を読みました。
この本は営繕屋の尾端が、怪異の出る建物や場所を営繕屋として修繕、改築し、そこに住む人々が怪異との折り合いをつけて生活していけるよう、手助けするお話の短編集です。
建物・場所にまつわる怪異、ということで、どの話も古く何かがいそうなその場の様子を鮮やかに描写されています。
怪異に悩まされる人の心情描写、情景描写が本当にすごい。先生の風景・情景描写はどの作品のものも全部大好きなんですが、かるかや怪異譚は家の中の不気味さ、それに折り合いがつくときの爽やかさが本当にすごかった。
その弐に「まつとし聞かば」という作品があるのですが、この話には猫の怪異が出てきます。事故で亡くなった飼い猫が、飼い主の少年の枕元に現れる話です。
私も14歳の白猫を飼っています。飼っていると言っても実家を出てからしばらく経つので一緒に住んではいませんが、言葉は通じなくても人生の多感な時を一緒に過ごし、家族間に起こる重要な局面ではいつも側にいてくれた、大事な家族です。
家猫の平均寿命は16歳くらいだそうですね。ずっと健康で長生きしてほしいですが、いつか必ず来る別れの日を想像した時に、こうやって怪異になって側にいてくれることもあるかもしれないなと思うと少しだけ心が軽くなった気がしました。
家出した猫が帰ってくる時の願掛けとして「まつとし聞かば今帰り来む」と言うおまじないを唱えるそうです。いつか来るその日のために、覚えておこうと思います。