仁尾智「いまから猫のはなしをします」感想

小説ではなく、短歌集です。猫についての。

数ヶ月前に本屋さんで見かけ、ページ数が少ないのと1ページあたりの文字数が少ないので(短歌なんでそれはそう) 立ち読みで一気に読んでしまったんですよね。読み終わったあと、胸がいっぱいで結局購入することになったのですが。

この短歌は猫を飼っている作者が日常にありふれた猫のいる光景を詠んだものなのですが、猫を飼ってる人であれば「あー、あるある」とちょっと笑えるものだったり、猫とのお別れを意識せざるを得ない胸が痛くなるようなものだったり、おもしろいんだけどちょっと切ない感じの歌集になっています。

かくいう私も、飼っている猫の年齢的にそろそろお別れを覚悟しないといけない、だけどペットロスに対してどのように向き合っていけばいいのかわからないと途方に暮れていた中でこの本に出会いました。

「いまから猫のはなしをします」には、いくつも共感できる短歌が収められていました。その中のいくつかを紹介します。

生きようとしている猫を看るうちにゆっくり覚悟ができてしまった

いまから猫のはなしをします P.13

心臓肥大により呼吸が早くて息苦しそうなうちの猫、それでもご飯モリモリ食べてトイレして、人間のベッドでグースカ寝てます。あと何日、あと何回この日常を見られるのだろう。そう思いながら、私はいつか来る日のために、目の前にある日常を目に焼き付けている。

幸せは前借りでありその猫を看取ってやっと返済できる

いまから猫のはなしをします P.47

猫に与えられた幸せを考えると、いなくなった時の喪失が怖い。でもそれを含めて『猫を飼う』ってことらしい。

手のひらで掬うみたいに抱き上げた猫に救われてたのは僕だ

いまから猫のはなしをします P.69

うちの猫を初めて抱き上げた日、手のひらにおさまるくらいに小さかった。あー命だ、って思った記憶は懐かしく、今は十倍以上の大きさになった老猫の寝息に、あー命だな、って思ったりする。寄り添ってくれるわけでも慰めてくれるわけでもない、ただそこにいるだけで人間を救ってくれるのが猫って生き物なんでしょう。

猫飼ってる人、猫好きな人、一冊いかがっすか。

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